水槽の上層から中層あたりを、体を斜めにして泳ぐ習性のある熱帯魚に「ペンシルフィッシュ」というものがいます。
アクアリウムで飼育する熱帯魚では古くから人気のある種なので、ご存知の方も多いはずですね!
一言でペンシルフィッシュと言っても、結構種類が豊富な魚なんですね。
そんなペンシルフィッシュの中で、最も人気のある種に「ナノストムス・ベックホルディ」がいます。
一見、地味そうに見える体色ですが、繁殖期にはアッと驚かせるような美しい婚姻色が魅力的なのとオスとメスで色彩が異なるという魅力があります。
特徴的な斜めの泳ぎ方、小さい口が「おちょぼ口」のようで愛嬌もたっぷりです(笑
ここでは、ナノストムス・ベックホルディの飼育方法や導入時の注意点についてご説明していきますね。
目次
ナノストムス・ベックホルディについて
ナノストムス・ベックホルディは、ブラジルのアマゾン川やネグロ川の上流域に生息するペンシルフィッシュです。
1872年に初めて発見されたペンシルフィッシュがこのナノストムス・ベックホルディとされ、ショップでも見る機会の多い、古くからポピュラーな存在となっているんですね。
発見と同時に「ナノストムス属」という分類が作られたのですが、その後にも近縁種がちょいちょいと発見されてきていて、分類がさらに細分化されたんですね。
「ポエキロブリコン属」や「ナノブリコン属」の2種類が追加されましたが、ペンシルフィッシュの分類については多くの意見や議論が飛び交い、1975年にこの2種類は廃止されることになりました。
、、、がしかし、現在でも「ナノブリコン属」の名前で流通している種類もいるため、ペンシルフィッシュの分類に関しての意見や議論は、今現在でも一部の人たちの間で続いていることが伺えます。
現在では全て同属化されていますので、基本的にペンシルフィッシュとは、カラシン目レビアシナ科「ナノストムス属」の小型の淡水魚を指します。
ただし、「ナノブリコン属」として出回っているものも存在します。
なんだか頭の中がごちゃごちゃして難しい話に聞こえそうですが、とりあえず「ナノストムス」も「ナノブリコン」も全部ひっくるめてペンシルフィッシュってことですね!
ナノストムス・ベックホルディと特徴は、オスとメスの色彩の違いが楽しめるという所でしょうか。
別名に「ゴールデンペンシル」という名前を持ち、メスは金色のボディに黒い横ラインが入ります。
対してオスは、鮮やかオレンジ色に染まり、オスとメスで全く違う体色が楽しめます。
ペンシルフィッシュと呼ばれるようになった由来
ペンシルフィッシュという名前の由来は、この魚の特徴的な泳ぎ方から来ています。
体を斜めにして泳ぐ姿が、字を書いている時に手に持っているペンのように見えることから、ペンシルフィッシュと名付けられたんですね。
また、体が鉛筆のようにスレンダー体形が特徴で、これも合わせて名前の由来となっています。
ナノストムス・ベックホルディの飼育データ
- 体長:最大で4cmほど
- 水質:弱酸性~中性
- 水温:20℃~27℃
- 寿命:2年~3年
- 参考価格:1匹あたり100円~150円
ナノストムス・ベックホルディは、体長が最大で4cmほどの小型の熱帯魚です。
性格は温和ですが、発情するとオスが同種同士で小競り合いをするようになります。
が、同サイズ程度で温和な他の熱帯魚とは気軽に混泳が楽しめます。
ナノストムス・ベックホルディのコケ取り能力
ペンシルフィッシュは、水槽内に発生するコケを除去するのに役立つといわれることがあります。
確かに、糸状の藻類など、発生して間もない柔らかいコケを突いている姿は度々目にします。
とは言っても、コケ取りとしては効果が限定的で、それこそ相当な数が居なければ目に見えるような効果は望めるようなものではありません。
ただ、全く効果が望めないという訳ではないので、コケ取りも含めてペンシルフィッシュの面白い生態も同時に楽しむという目的で導入するのが良いでしょう。
※コケ取りと言えば、熱帯魚ではオトシン系やプレコ、エビ類ではヤマトヌマエビorミナミヌマエビは、かなりのコケ取り能力があります。
水質の変化に敏感な熱帯魚
ナノストムス・ベックホルディは、飼育自体は難しい熱帯魚ではなく、いったん飼育水槽に慣れてしまえば容易に飼育ができます。
ただし、水質の変化には若干弱い性質があり、急な水質の悪化や水温の変化には注意が必要です。
特に注意したいのが、購入してきて水槽に移すときですね!
水質と水温を合わせる「水合わせ」の作業を行った後、水槽に移すようにしましょう。
また、換水時の水温の急変化にも気を付けるようにしましょう。
新しく水槽に入れる水の温度差があると、水温が一気に変化してしまい、病気を引き起こす原因となってしまうこともあります。
必ず、バケツに汲んだ水は水槽水と誤差が少ないよう、慣れないうちは水温計で温度を目視してから入れると安全ですね。
小競り合い対策をする
ナノストムス・ベックホルディは同種同士で小競り合い(ちょっとした喧嘩モード)をします。
特に発情した1匹のメス争いで、オス同士の体をくっつけあってフィンスプレッティング(各ヒレを広げて自分を大きく見せる)の行動を見せます。
こういった小競り合い、喧嘩をするような熱帯魚を飼育する上での有効な対策としては、「隠れ家を多く作る」、「ある程度の数を導入する」があります。
隠れ家が多くあれば、闘い敗れた個体はすぐに身を潜めることが可能ですから、強い個体に追撃されてフルボッコ状態になる心配がなくなります。
また、数をある程度(多め)導入するのも有効な手段です。
例えば2匹しかいない状態だと、完全に力関係が出来てしまい、強い個体が弱い個体を一方的にボッコボコのフルボッコにしてしまいます(泣
ですが、数が多いと特定の個体だけが狙われるという心配がありませんので、縄張り意識の強い熱帯魚というのはある程度の数で飼育した方が上手くいくこともあるんです。
口が「ちっこい」ので給餌には工夫を!
ナノストムス・ベックホルディの口は相当小さい、まさに「おちょぼグチ」って感じです。
見ていると愛嬌があって可愛らしいのです(笑
ただ、あまり大きな餌を食べることが出来ないので、与える際はクチに入る大きさまで小さくしてやってから与えた方が、確実に行き渡らせることができます。
特に他の熱帯魚と混泳している水槽では、他の熱帯魚ばかりバクバク食べてしまうことが多いです。
混泳水槽では、特に給餌には気を配る必要があります。
ナノストムス・ベックホルディの繁殖について
ペンシルフィッシュは繁殖が難しいことで知られていますが、ナノストムス・ベックホルディは繁殖例が多く、水槽内繁殖が可能です。
オスとメスの見分け方ですが、オスは発情すると「とにかく美しいッ」オレンジ~赤の発色が一段と出てきます。
また、オスがメスを追いかけまわしたり、メス争いでオス同士がヒレを広げて小競り合いをするので、体色や行動から判別が容易です。
産卵は卵をバラ撒くように産む「バラ撒き型」で、水草の根付近や障害物の底あたりに産み落とされます。
さいごに
ナノストムス・ベックホルディは、斜めに泳ぎ、おちょぼクチが可愛い小型の熱帯魚なんですね。
この「斜めに泳ぐ」というのは、ペンシルフィッシュ特有の持ち味でもあるので、水槽内に入れるだけでインパクトがあります。
小競り合いをしだすと水槽内が騒がしくなりますが、それも飼育の醍醐味でもあります!
ペンシルフィッシュを飼育したいという方は、飼育の容易なナノストムス・ベックホルディは是非お勧めの種です。