日本全国に生息する美しい淡水魚に「タイリクバラタナゴ」という名前の魚がいます。
釣り魚としても人気がありますが、その美しい体色から飼育魚としても根強い人気があります。
タイリクバラタナゴは、それほど大きくなるような魚ではありませんが、とても体高があって見ごたえがあります。
つまり、体表面積が広いんですね!
それでいて、美しい色彩が広い面にババン!と現れるので、観賞価値は非常に高く、この姿を見れば人気がある理由も頷けるでしょう。
観賞価値が高く飼育が楽しい魚ですが、二枚貝に産卵するという面白い繁殖形態を持ち、水槽内でも容易に見ることが出来るのもタイリクバラタナゴの魅力です。
飼育に繁殖、ともに楽しめる美しい淡水魚なんですね。
以下では、タイリクバラタナゴの飼育方法や導入時の注意点についてご説明していきます!
タイリクバラタナゴについて
タイリクバラタナゴは、北海道から沖縄まで全国に広く分布する淡水の魚です。
もともと日本にいる固有種ではなく、1942年に食用のため中国から入ってきたハクレンやソウギョなどに混ざって持ち込まれた個体が広まったと言われています。
つまり、タイリクバラタナゴは「外来種」なんですね。
・・・外来種って聞くと、なんだか「悪い奴」ってイメージがありますが、、、実は在来種に多大な影響を与えているという現実があります。
在来種では亜種関係にある「ニッポンバラタナゴ」がいて、これが非常によく似た見た目をしているんですね。
ちなみに、タイリクバラタナゴとの違いは、ひとつめが「大きさ」です。
多くの場合、タイリクバラタナゴの方が大きく成長するという特徴があるんですね。
また、タイリクバラタナゴの腹びれのフチ(外側だけ)は真っ白な線が入るのに対し、ニッポンバラタナゴにはこれが見られません。
他にも、側線鱗がタイリクバラタナゴには見られ、ニッポンバラタナゴにはほとんど見られないという特徴もあります。
・・・とはいっても、似すぎているため、「これはどっち!?」と問題を出されても正直、当てられる自信は全くありません・・・(泣
※以前から両者は亜種関係だとされていましたが、近年の分析で遺伝子が全く違うことが分かっているそうです。
上記で書いた、在来種に多大な影響を与えているというのに話を戻しますが、タイリクバラタナゴは在来種であるニッポンバラタナゴと交雑して、生態系を崩してしまっているんですね。
もともと、タイリクバラタナゴ方が大型化する為、繁殖力が強く、卵の数も多いので、増えまくるor交雑して、どんどん生息域を拡大し、今では全国で見られるようにまでなったという訳なんですね。
そんなこんなで、タイリクバラタナゴは、なんと!「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定されており、以前は要注意外来生物に指定された種でしたが、現在は解消され「生態系被害防止外来種」となっています。
ちなみに、あの有名な熱帯魚「グッピー」もコレに指定されているんですね・・・。
まあでも、、、もちろん、何の許可なく飼育は可能です。
ただ、途中で飼えなくなったからと言って近くの川に放すのだけは、「ダメ!絶対!」です。
そんな、タイリクバラタナゴですが、観賞魚としての人気は非常に高いです。
特に美しいのが繁殖期のオスに見られる婚姻色で、まさにこの魚の名前の由来ともなっているバラのように美しい姿が見られますよ!
タイリクバラタナゴの飼育データ
- 体長:8cm
- 水温:5℃~25℃
- 水質:中性~弱アルカリ性
- 寿命:5年前後
- 参考価格:1匹あたり300円
タイリクバラタナゴは、体長が最大で8cmほどの小型の淡水魚です。
同種同士で小競り合いをすることがありますが、喧嘩と言うほどではないので問題になるようなことはないです。
むしろ同種同士で複数で飼育することで、体高のある美しい色彩が見られるのでお勧めです。
日本中に生息するだけあって幅広い水温、水質にも対応できるのもタイリクバラタナゴの魅力として言えるでしょう。
屋外でも飼育が出来ますし、同サイズ程度の熱帯魚との混泳も可能です。
お勧めは、同じく日本の川に生息するような淡水魚との混泳です。
タイリクバラタナゴは、中層以上を遊泳するので、低層を泳ぐシマドジョウなんかは相性抜群ですよ!
飛び出し事故の多い淡水魚
タイリクバラタナゴは、水面からジャンプして水槽の外へ出てしまう「飛び出し事故」が意外と多い淡水魚で知られています。
水槽のフタにも、ガラス・プラスチック・発泡スチロールなど様々なタイプがあるので、自分の水槽に合ったサイズで、お気に入りの素材を選ぶといいです。
見た目はガラス蓋が最高ですが、取り扱い超絶注意(割れるよ危険的な・・・)です。
プラスチックとかは、見た目はガラス蓋に劣るだけで、とにかく丈夫です。
タイリクバラタナゴの餌について
タイリクバラタナゴの餌は、基本的には川魚専用の人工飼料をメインに与えるいいですよ!
ただ、冷凍アカムシのような生餌も好んで食べるので、たまには人工飼料以外の餌も食べさせてあげるといいかもしれませんね。
タイリクバラタナゴの繁殖について
タイリクバラタナゴ飼育の醍醐味は繁殖にあると言っても過言ではありません!
この魚、、、他の魚種には見られない独特の繁殖方法を持っていまして、、、なんと、二枚貝の中に卵を産み付けるという面白い習性があるんですね!
オスとメスの見分け方は容易で、オスの方が体色が綺麗で、メスはオスに比べ地味な感じです。
特に、繁殖期のオスは婚姻色が出るため体色が美しく、メスは輸卵管をぶら下げたまま泳ぐので、一発で見分けることが出来ます。
タイリクバラタナゴの繁殖には「ドブ貝」という二枚が良く用いられます。
繁殖期になったタイリクバラタナゴのいる水槽に二枚貝を投入すると、オスは二枚貝の上に縄張りを作り、お気に入りのメスを誘って産卵を行います。
この時のオスは気性が荒いので、他の個体が追いかけまわされてフルボッコにされないよう、繁殖用水槽では水草を多く植えたり、流木や土管などのオブジェクトを入れたりなど、隠れる場所を多く確保するのが理想です。
卵はそのまま貝の中で孵化し、浮上してくるまで実に1カ月ほどかかるんですね。
なので、産卵後はいかに二枚貝を維持できるかが重要となります。
気を付けるポイントとしては、、、
- 二枚貝は砂に潜る習性があるので、砂利の薄い場所に設置し潜るのを防ぐ
- 貝が閉じた時に卵が吐き出されないよう、ストレスを与えないようにする
潜るのを防ぐ理由は、稚魚が浮上してくるまで1カ月かかるので、その少し前に回収して別の場所に移すからです。
そうすることで親や他の魚に食べられることなく、確実に稚魚を獲得できます。
回収する目安としては、産卵してから3週間後が理想です。
稚魚はすぐにブラインシュリンプを食べることが出来る大きさなので、ここまで来たらあとは簡単です!
タイリクバラタナゴの繁殖は、産卵までは超簡単、、、その後の二枚貝を1か月間管理するのがちょっと難しいんですね。
それだけに、稚魚が浮遊してきたときの感動は計り知れないので、この難しい二枚貝の管理も繁殖の一連の流れだと思って楽しみましょう!
さいごに
タイリクバラタナゴは、飼育に繁殖ともに楽しめる淡水魚です。
非常に美しい体色に加え、とても面白い繁殖形態を持つ魚なので、アクアリウムの魅力が十分に味わえる種だといえます。
屋外飼育が出来ますので、メダカを飼育するようなビオトープに導入するのも良いですし、同サイズ程度の熱帯魚と混泳させても面白いです。
日本の淡水域に生息するサカナだけで混泳させるのも良いですよね!(オススメ)
ペア売りもされているので、タイリクバラタナゴを飼育するときは、ぜひ繁殖にもチャレンジしてみて下さいね!